インピーダンス測定によるリチウムイオン電池(LIB)セルの劣化把握

2012-0712-02
研究者名
所属
専門分野
デバイス関連化学,ナノバイオサイエンス,電子・電気材料工学
キーワード

背景

リチウムイオン二次電池は、電気自動車・スマートグリッドなどへの適用に向けた更なる高性能化を目的とした種々の検討が行われている。これらへの適用を目指した際には、電池の2次利用に対する問題も取り沙汰されるなど、これまで以上に安全性、信頼性、寿命を担保するための評価手法の確立が求められる。交流インピーダンス法は、非破壊であるためサンプル個体の経時変化を追跡可能反応であり、周波数特性から素過程に分離可能であるなどの特徴を備え、注目を集めている。その一方で、市販リチウムイオン電池に適用する際の問題点として、電解液抵抗、集電体の電子抵抗、正極・負極の界面反応、溶液内のイオン拡散など数多くの反応過程があり、交流インピーダンス解析においてはこれらのデータが複合化し、解析が複雑化することや、インピーダンスを極限まで下げることで出力の向上を目指す実電池系においては、得られる応答の時定数の重なりにより解釈が困難になるの問題がある。

シーズ概要

本技術は,市販LIBのインピーダンス解析において市場での電池評価に「使える」測定法の確立を目的として、電解液の抵抗、正極・負極の界面反応、被膜、固相内のイオン拡散などの電池内部の構成を考慮しつつも最低限の因子で、幅広い周波数帯の解析に使用可能な等価回路を設計し、そのインピーダンス応答からLIBの容量劣化を解析できる。加えて、低温条件下でインピーダンス解析を行うことで、常温では議論出来なかったプロセスのより正確な解析が可能となることも見いだしている。

応用・展開

企業各社の努力により多種多様な材料から構成される市販LIBにおいて、本手法は状態解析手法として適用可能であり、任意の周波数を選択することで、電気自動車もしくはスマートグリッド等の機器内に存在するLIBの劣化等の状態変化を非破壊でモニタリングすることを可能とする。

優位性

本研究では、市販LIBの測定温度を変化させることで、市販レベルでは通常不可能な電気化学反応場のインピーダンス,電極と電解質の界面に存在すると考えられるSolid Electrolyte Interface(SEI)層を分離解析することを可能としており、市場におけるLIB劣化状態解析分野において優位性がある。

提供目的

受託研究、共同研究、技術相談

資料

  • 市販リチウムイオン電池の内部状態解析を可能とする等価回路と反応イメージ(関連論文1)
  • 市販LIBの劣化状態解析(関連論文2)
  • 低温条件下で分離される市販LIBの周波数応答(関連論文3)

関連論文

  • 1.T. Osaka, T. Momma, D. Mukoyama, H. Nara, “Proposal of Novel Equivalent Circuit for Electrochemical Impedance Analysis of Commercially Available Lithium Ion Battery,” J. Power Sources, 205, 483-486 (2012).
  • 2.D. Mukoyama, T. Momma, H. Nara, T. Osaka, “Electrochemical Impedance Analysis on Degradation of Commercially Available Lithium Ion Battery during Charge-Discharge Cycling,” Chemistry Letters, 41, (4), 444 (2012).
  • 3.T. Momma, M. Matsunaga, D. Mukoyama, T. Osaka “Ac impedance analysis of lithium ion battery under temperature control” J. Power Sources, 216, 304-307 (2012).

関連特許

  • 特願2011-226143 "電池システムおよび電池の評価方法” 逢坂哲彌、門間聰之、横島時彦、向山大吉、奈良洋希 出願日:2011年10月13日 出願人:学校法人早稲田大学
掲載日: 2012/07/12