グリーンメーカー・グリーンコンシューマーを育てる指標づくり

背景

企業の環境配慮活動は、様々な形(環境(CSR)報告書、エコラベルなど)で公開されて消費者の目に入るようになってきた。しかし、企業の発信する環境情報に消費者がどのように反応し、それによって社会全体がどのような影響を受けるのかという分析はあまり進んでいない。過去10数年に企業の環境配慮活動は飛躍的に進展したが、さらにその効果を定着させるためには、企業のそれらの活動を正しく評価できるグリーンコンシューマーの育成が不可欠である。消費者啓発のために、企業自身ができることは何かという問題には研究の余地が多く残されている。

シーズ概要

企業の環境配活動がもたらす環境影響評価を幅広い視点から評価するために産業連関分析の手法を応用する。また、消費者行動や、企業自身の行動を相対的に評価・分析するために、家計調査、工業統計調査など、社会統計を用いた計量経済学的手法を応用する。
それによって、消費者の満足度(効用指標)、企業の生産コスト、環境影響(ある製品の生産によるLCA的CO2排出)等を同時に考えたとき、

1. ペットボトル飲料は冷蔵販売するか常温品を販売するか
2. 公共交通利用を促進するかカーシェアリングを進めるか
3. エコハウスに建て替えるか既存住宅を改修するか
4. レストランを利用するか家庭調理食を便利にするか
(そのとき中食(惣菜、レトルト食品等)の役割は?)
5. エコ商品を値引きするかポイントを付与するか
(そのときポイントの使途は(環境配慮型使途に限定か)?)

といった二者択一の難しい問題に対して、社会全体としてCO2排出を押し下げていけるようにするには、どうすればよいか、そのために企業はどのような情報発信をするべきかを考察する。

応用・展開

消費者は小売店で消費財に直面するだけであるが、消費財の環境負荷にはその消費財のサプライチェーンに連なるすべての生産活動が影響を与えている。したがって消費者は、サプライチェーンの上流側に関わる情報についても正しく判断しなければならない。また、サプライチェーンの上流に位置する産業・企業にもそうした配慮が必要になる。産業連関表はもともと、そのようなサプライチェーン上にある産業(企業)間の相互依存関係を分析するために開発されたものである。
たとえば、食品は、食品原材料の供給元である漁業・農業にさかのぼって考える必要がある。エコハウスの問題は、建材を供給する林業、建築廃材等のバイオマスエネルギー問題との相互関係を考える必要がある。
産業連関表の分析範囲は全産業を網羅していることから、幅広い分野の産業・企業分析に応用可能である。

優位性

企業のプロセスデータを産業連関表・環境分析用産業連関表を併用しながら分析を行うため、ミクロであると同時にマクロ的視点からの分析をすることができる。また、経済学的な消費者や生産者の行動理論に基づく、いろいろな社会統計を用いた計量経済学的な分析手法も組み込むことにより、供給者サイドと同時に消費者サイドの視点にたった分析を行うことができる。これらのことを通じて、社会科学的な見地からのライフサイクルアセスメント(LCA)を提案したり、個別企業の環境配慮活動を社会システム全体の中で位置づけることを提案したりすることができる。

提供目的

受託研究、共同研究、技術相談

資料

掲載日: 2011/09/06