表題番号:2026C-211 日付:2026/03/25
研究課題WDR6欠損による脂肪細胞の分化制御機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 千葉 卓哉
研究成果概要

本研究では、WDR6遺伝子が脂肪細胞分化および全身の脂質代謝制御に果たす役割を明らかにすることを目的として、肥満モデルマウスおよび培養細胞を用いた解析を行った。まず、肥満モデルマウスを用いたin vivo解析により、WDR6欠損は体重増加を抑制し、肝臓および脂肪組織の重量を低下させることが明らかとなった。一方で、摂食量や飲水量に顕著な差は認められず、これらの変化はエネルギー代謝の調節によるものである可能性が示唆された。また、脂肪組織と肝臓において脂質代謝の亢進を示唆する変化が認められ、脂肪蓄積の抑制に関与していることが考えられた。

さらに、培養細胞を用いた解析では、WDR6欠損により脂肪細胞への分化が著しく阻害されることが確認された。分化に伴う遺伝子発現変化は大きく抑制されており、WDR6が脂肪細胞分化の初期段階に重要な役割を果たす可能性が示された。また、WDR6欠損細胞ではエネルギー代謝のバランスに変化が生じており、解糖系の亢進およびミトコンドリア機能の低下が示唆された。

加えて、これらの結果は、脂肪細胞分化と代謝制御が密接に連動していることを示すとともに、WDR6がその接点に位置する因子である可能性を示唆している。特に、分化の進行に伴う細胞状態の変化とエネルギー代謝の再構築との関連性が示された点は重要であり、従来の分化制御の理解に新たな視点を提供するものである。

以上より、WDR6は脂肪細胞分化と脂質代謝を統合的に制御する新規因子である可能性が示された。本研究は、肥満や代謝疾患の分子基盤の理解を深めるものであり、将来的な治療戦略の開発に資する知見を提供することが期待される。