表題番号:2026C-013 日付:2026/07/29
研究課題デジタル通貨に対応した貨幣法(公法・私法)の再構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 久保田 隆
研究成果概要
 

「デジタル通貨に対応した貨幣法(公法・私法)の再構築」に関連し、2026年1月より20269月半ば時点で、2026年は英語書籍1冊への寄稿(1章分<校正中>)、日本語書籍2冊への寄稿(『メタバースと法』成文堂<2026年>で1章分、『国際経済法』博英社<2027年>で2章分提出済)、論文4本(公刊2本、投稿中2本)、研究報告9本を行った。

国際法を含む公法については、デジタル通貨に対応した通貨主権概念の再構築、デジタル化・AI化に伴う中央銀行独立性の課題、高性能AIとデジタル通貨との関係を報告し、『国際経済法』等で包括的に検討した(後述)。私法については、ステーブルコインを中心に国際商事法務や『メタバースと法』の中で詳細に検討した。ステーブルコインや分散型金融の法整備は各国ともに途上であり、国際取引の円滑に向けて私法統一的な法整備が求められる。

公法で最も重要な通貨主権について付言すれば、従来の理解のように、通貨主権は一国の排他的特権として確保されるものではない。むしろ、他国との相互依存関係の中で、国際協調義務を伴いつつ確保される権限である。一国の金融政策が隣国の通貨安定に重大な悪影響をもたらす場合(例:デジタルドル化に晒されたナイジェリア)に、協調義務を国際法上の通貨主権の内容として一般的に組み込み、各国の通貨主権を相互に確保し合う枠組みを構築する提案は 、実現までに迂遠な道のりを要する。そこで私見では、国際決済システム(例:Project Agora)の枠組みの中に、通貨主権の相互尊重規範を制度として組み込むことで、各国が自国の通貨主権を確保しつつ国際協調を実現すべきと考える。また、民主的統制との関係では、通貨主権を民主的に正統な形で確保するために、国内の金融規制や中央銀行独立性に係る説明責任を向上させるとともに、IMFBIS等による国際規制の民主的正当性も不断に高めることが肝要である 。