表題番号:2025R-064
日付:2026/02/04
研究課題機械学習を活用した有機分子の結晶構造予測
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | データ科学センター | 准教授 | 谷口 卓也 |
- 研究成果概要
- 有機分子の結晶構造は、医薬品における溶解性や安定性、あるいは有機半導体における電気伝導性などの物性を直接左右するため、その構造を正確に予測することは極めて重要である。しかし、有機結晶はファンデルワールス力や水素結合といった弱い分子間相互作用によって安定化されており、わずかなエネルギー差で多数の結晶構造(多形)を取り得る。そのため、最も安定な構造を理論的に予測することは困難であり、従来の結晶構造予測では膨大な数の候補構造を生成・評価する必要があった。この計算コストの高さは、医薬・材料分野における結晶設計の大きなボトルネックとなっていた。本研究では、この問題を解決するため、機械学習とニューラルネットワークポテンシャルを組み合わせた結晶構造予測ワークフロー「SPaDe-CSP」を開発した。SPaDe-CSPでは、分子構造を入力として、結晶の対称性を表す空間群と分子の詰まり具合を示す結晶密度を予測する二つの機械学習モデルを用いる。これにより、従来手法で多数生成されていた低密度かつ不安定な構造候補を事前に排除し、有望な探索空間に絞り込むことが可能となる。絞り込まれた候補構造の最適化には、量子化学計算に匹敵する精度を低い計算コストで実現するニューラルネットワークポテンシャルを用いた。本手法の有効性を検証するため、構造の複雑さが異なる20種類の有機分子に対して結晶構造予測を行った結果、16種類(80%)において実験的に観測された結晶構造を正しく再現することに成功した。この成功率は、機械学習による探索空間縮約を行わない従来のランダム探索と比較して約2倍に相当する。一方で、分子量が大きく構造が複雑な分子ほど予測が難しい傾向も明らかとなり、本手法の有効性と同時に今後の課題も示された。