表題番号:2025R-040 日付:2026/02/17
研究課題祖先タンパク質復元解析による生命の起源と初期進化の場となり得る環境条件の探求
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 赤沼 哲史
研究成果概要

Candidate phyla radiationCPR)は、分子系統解析により他の真正細菌とは大きく異なる系統群として認識される大規模なクレードである。現存するCPRは地下水などの低温環境から多く検出され、代謝関連遺伝子の欠損を伴う寄生的生活様式を示すことが知られているが、その共通祖先の生息環境や生態は未解明である。本研究では、多くのCPR系統で保存されるclass IIリジルtRNA合成酵素に着目し、祖先配列再構成と耐熱性解析により共通祖先の環境を推定した。現存生物由来配列から複数の系統樹を構築し、祖先型リジルtRNA合成酵素を復元して熱変性温度を測定した結果、いずれも80℃を超える高い耐熱性を示した。既知の細菌における至適生育温度とリジルtRNA合成酵素の耐熱性との正の相関に基づく検量線から、CPR共通祖先は60℃以上の高温環境に生息していたと推定された。

 さらに、RNAワールドから現代生物への移行過程における初期RNA–タンパク質相互作用の成立条件を検討した。ProteinMPNNを用いて10種類のアミノ酸のみからなるリボソームタンパク質変異体を設計したところ、通常条件では天然構造を形成しなかったが、Mg²などの二価金属イオン存在下で天然様構造を形成し、熱安定性も向上した。また、塩基性残基を欠くにもかかわらず、わずかながらRNA結合能を保持した。これらの結果は、原始的RNA–タンパク質複合体において二価金属イオンが相互作用形成をサポートし得ることを示し、初期のタンパク質-RNA相互作用を金属イオンが補助したという仮説を支持した。