| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 竹中 宏子 |
- 研究成果概要
本研究では、スペイン・カタルーニャの伝統文化である人間の塔(Castells)における男女の関わり方に着目し、ジェンダー平等の実践がどのように成立しているのかを文化人類学的に考察した。主としてCastellers de SantsおよびCastellers de Vilafrancaにおける参与観察と聞き取りを行い、練習や本番における男女の役割、チーム内の制度や意識について調査した。
調査からは、Castellsにおいて女性の参加がすでに相当程度定着しており、男女がともに塔を構成することが一般的となっていることが確認できた。一方で、必ずしもすべての役割が男女同じように担われているわけではない。特に本番で高く複雑な塔を構築する際には、身体的条件などから男性が選ばれやすく、女性が重要なポジションに就くことには一定の偏りがみられた。ただし、練習の場では女性も幅広い位置を経験するほか、塔の最下部に位置するbaixやcontrafortなどには、女性が担い手として起用される事例も複数のチームで確認された。
また、近年のジェンダーをめぐる制度的な変化も明らかになった。Castellsの連盟であるCCCCは、各チームにジェンダーやセクシュアル・ハラスメント防止に関する担当部署を設置するよう促しており、Santsでもその取り組みが実施されている。こうした制度化は、Castellsの世界においてジェンダー平等が重要な課題として認識されていることを示している。
特に注目されるのが、Santsが毎年実施している女性だけによる塔である。通常の塔では身体的条件や技術的判断によって配置される位置が決まるが、この機会には女性自身が希望するポジションを選択できる。その経験は、普段とは異なる視点からCastellsを捉え直し、新たな参加意欲やモティベーションを生み出す契機となっている。以上から、Castellsにおける男女平等は、単なる理念としてではなく、身体的実践、制度、参加者の意識が相互に作用するなかで形成されていることが明らかとなった。