表題番号:2025R-021 日付:2026/02/24
研究課題グローバル・サプライチェーン下の貿易制裁の労働市場への影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 教授 横田 一彦
研究成果概要

本研究は、グローバル・サプライチェーン(GSC)下で実施される貿易制裁が、雇用・賃金・生産性といった労働市場指標にどのような影響を及ぼすのかを、理論と実証の両面から明らかにすることを目的とした。

貿易制裁は相手国の政策変更を促す手段である一方、工程の国際分業とアウトソーシングにより生産が複数国にまたがる現代では、影響は制裁対象国にとどまらず、部品・中間財の供給や受託生産、輸送・調達の結節点を介して第三国へも連鎖的に波及し得る。そこで本研究は、従来の二国間貿易モデルでは捉えにくい「多国間の波及経路」に焦点を当て、国際産業連関分析を用いてGSC構造を踏まえた波及効果を検証した点に独自性がある。

この枠組みにより、制裁が直接の取引遮断として作用する局面だけでなく、投入財の不足や代替調達、取引コストの上昇を通じて生産活動が変化し、その結果として労働需要や付加価値配分が変わり得るという視点を提示し、制裁の効果と副作用(第三国への波及)を同時に評価する必要性を示唆した。研究費は、調査に伴う移動、関連資料の収集・購入、成果発信に必要な編集・校正や投稿関連費など、研究遂行と外部発信を支える用途に充当した。

得られた知見は研究発信に加え、大学教育にも還元し、担当講義へ還元し授業改善や学生の理解の深化につなげ、担当講義「グローバル・サプライチェーン・マネジメント入門」は2025年度の早稲田大学ティーチング・アワードを受賞した。

研究成果は2つの国際学会(全国大会:事前審査あり)と1つの国内セミナーで発表した。研究成果は査読付き国際英文ジャーナルと査読付き英文書籍のチャプターとして、また一般向け書籍のインタビュー記事として公刊した。

今後は、制裁の形態の違いや産業特性・GSC上の位置づけによる影響をより精緻に捉えるため、データと手法の拡張を進め、政策当局や企業のリスク管理に資する実証的根拠の蓄積を目指す。