表題番号:2025R-010 日付:2026/02/02
研究課題ターゲット語と形態素を共有する・しない形態隣接語の意味活性化による効果の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 日野 泰志
研究成果概要
  私たちが、語(e.g., LEOTARD)を読む際、実は、その語と綴りが類似の別の語(e.g., LEOPARD)の意味も活性化することが知られている (e.g., Foster & Hector, 2002; Hino, Lupker & Tayler, 2012; Rodd, 2004)。最近、複数の研究者により、形態類似語の中にターゲット語と類似の意味を持つ語が多いほど、英語を使った語彙判断課題(語―非語判断課題)の「語」判断の反応が速くなるという語の形態-意味対応の一貫性効果が報告されている(e.g., Hino, Jared & Lupker, 2025; Marelli & Amenta, 2018; Marelli, Amenta & Crepaldi, 2015; Siegelman, Rueckl, Lo, Kearns, Morris & Compton, 2022)。特に、Hino et al. (2025)は、この形態−意味対応の一貫性効果が文字追加隣接語による効果であり、文字置換隣接語は、この効果にほとんど貢献していないことを明らかにした。
 そこで、本研究では、日本語の仮名語のみを対象に、文字追加隣接語と文字置換隣接語による形態-意味対応の一貫性を操作した語彙判断課題を行い、一貫性効果の観察を試みた。実験の結果、Hino et al. (2025)の報告と同様、仮名語を対象に形態−意味対応の一貫性を操作した語彙判断課題においても、文字追加隣接語による一貫性は有意な効果を生じたのに対して、文字置換隣接語による一貫性は有意な効果を生じないことが明らかとなった。
また、実験では、行動データの収集に加えて、事象関連電位も測定したところ、文字追加隣接語条件においてのみ、N400の後期成分に一貫性効果が確認された。一貫性が低い語に対するN400の振幅は、一貫性が高い語に対するN400の振幅よりも有意に大きかった。仮名語の場合、文字追加隣接語の中には、ターゲット語と形態素を共有する複合語が多く含まれる可能性があることから(e.g., テープ – 紙テープ、セロテープ)、形態素ファミリーによる促進効果が期待されるのに対して、文字置換隣接語はターゲット語と同じ形態素を共有する可能性が低いため(e.g., コンタクト – コンダクト、コンパクト)、形態素ファミリーによる促進効果を生じにくかったことによるものと思われる。