表題番号:2025Q-041 日付:2026/03/28
研究課題昆虫の外骨格構造と飛翔形態を忠実に再現した昆虫型飛翔ロボットの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 澤田 秀之
研究成果概要

 本研究では、間接飛翔筋とヒンジ構造を用いた双翅目昆虫の羽ばたきを、3Dプリント技術とSMAアクチュエータを適用して再現する手法を提案した。本研究の目的は昆虫の生物学的メカニズムを模倣し、これを新しいロボット技術に応用することにある。昆虫の飛翔は、胸部外骨格やヒンジ構造を介した複雑なメカニズムにより実現されていることがこれまでの研究により解っている。間接飛翔筋によって胸部外骨格を変形させることで効率的に翅を羽ばたかせると同時に、翅面を回転させて揚力が生み出される。ヒンジ構造に関しては、その複雑さゆえに詳細な構造と飛翔に寄与しているメカニズムは未だ解明されていない。

 本研究では、Ennosらが提唱したヒンジ構造のモデルを基に3Dプリントで構造を再現し、形状記憶合金(SMA)ワイヤをアクチュエータとして応用した。SMAワイヤは背腹筋を模倣する役割を果たし、パルス電流を流すことでこれに同期した伸縮が起こり、外骨格が変形して羽ばたき動作の再現に成功した。

 駆動実験では、羽ばたきの変位、外骨格の変形、翅面の変形の3つを測定した。その結果、最大変位133.2mm、最大変位角57.9度を達成し、実際の昆虫に匹敵する性能を確認した。またEnnosモデルにおいて重要な要素であるLateral Scutumの変形についても、本研究で作成したモデルで再現されていることも確認した。一方で、Pleural Wallの変形は、Boettigerの観測やEnnosの説明とは一致しなかった。この原因として、今回のモデルが胸部の断面構造のみを再現しており、背縦走筋や奥行方向の外骨格の再現が行われていない点が考えられる。さらに翅面の変形に関する測定では、Ennosらの説明通り、受動的な捻じれが生じていることを確認した。この結果は、昆虫の飛行メカニズムを模倣する上で重要な要素が再現されていることを示していると考える。今後、より正確に昆虫の身体構造を再現し、昆虫と同様な機構で飛翔可能なロボットの開発を進めていく。