表題番号:2025Q-022 日付:2026/04/03
研究課題現実的核力に基づく変分法による核物質状態方程式の作成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 鷹野 正利
(連携研究者) 京都大学 助教 富樫甫
(連携研究者) 先進理工学研究科 修士2年 大須賀敏也
(連携研究者) 先進理工学研究科 修士2年 北中健斗
研究成果概要

現実的な核力から出発して一様核物質の状態方程式を求めるための、陽なエネルギー汎関数を用いた変分法の再検討及び拡張を行った。

2体核力の中心力、テンソル力、スピン・軌道力成分までを考慮した、絶対零度中性子物質に対するエネルギー表式を用いた変分計算結果は、中性子物質の一核子当たりのエネルギーの厳密解を与えるMonte Carlo計算結果とよく一致している。一方で対称核物質に対して、同様の核力成分を考慮したエネルギー計算結果は、他の量子多体計算結果に比べかなり低い値を与えていた。ただしその際、中性子物質の場合と比べ、対称核物質に対するエネルギー表式にはまだ考慮されていない寄与が残っていた。

そこで本研究課題では、まず絶対零度対称核物質に対して、上記寄与を考慮したエネルギー表式を作成したが、その寄与は無視できるほど小さいことが判明した。これは中性子物質においてその寄与が大きいことと整合しない。そこで中性子物質に対するエネルギー表式における当該寄与の再検討を行い、最終的に中性子物質に対してもその寄与が小さいことが判明した。すなわち絶対零度中性子物質の場合、そのエネルギー計算結果はMonte Carlo計算結果と食い違ってしまうことが判明し、さらなる改良が必要となった。

そこで中性子物質に対して、これまで考慮していない別の複数の寄与を摂動論的に考慮し、その中でスピン・軌道相関の4次の寄与を取り入れることが、結果の改善に有効である可能性が示された。

また現実的核力から出発して有限温度中性子物質の一核子当たりの自由エネルギーを求める変分計算に対しては、従来温度効果を一部無視した近似的取り扱いがなされていたが、そこに正しく温度効果を取り入れる改良を行った。その結果、特に高温高密度状態の中性子物質において、一核子当たりのエントロピーがより減少する傾向が得られた。