表題番号:2025Q-021 日付:2026/03/17
研究課題波動カオスとレーザー媒質による2重非線形性が導く普遍則の探求
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 原山 卓久
研究成果概要

完全カオス系となるキャビティ形状のビリヤードレーザーでは、すべての共鳴波動関数が量子エルゴード性を持つため、共鳴波動関数の強度パターンの重なりが非常に大きく、キャビティ内部でレーザー媒質が一様分布している場合、波動関数がレーザー媒質を通じて外部から注入されるエネルギーを獲得するには、1つの共鳴波動関数だけがレーザー発振状態となることが効率がよい。これに起因して、従来の量子・波動カオス研究の枠組みを越えた、波動カオスとレーザー媒質の2重の非線形性が、従来の量子・波動カオスの普遍則とは異なり、すべてのカオティックビリヤードレーザーでは、系の詳細に関わらず、常にシングルモード発振に対応する定常状態が安定で、マルチモード発振に対応する定常状態が不安定となる普遍的単一モード発振という新しい普遍則をもたらすことをレーザー発振の基礎方程式であるマクスウェル・ブロッホ方程式を用いて、理論的に解明した。

 また、本研究で用いたビリヤードキャビティは、外向き波境界条件のために、レーザー媒質がない場合でも非エルミートな系という興味深い研究対象となっている。特に、非エルミート性の効果が大きく現れるのが、カイラルペアとよばれる近縮退した共鳴である。非エルミート性を反映して、固有波数は複素数であるが、系が2つのシステムパラメータを持っている場合、2つの固有波数が完全に縮退し、それらに属する固有波動関数が完全に一致して1つだけになるパラメータの値が存在する。この特別なパラメータの組はExceptional pointとよばれ、精力的に研究されている。本研究では、完全非対称な形状のビリヤードレーザーのExceptional Point付近でのカイラルペアのレーザーダイナミクスについても、理論と数値計算で明らかにした。