表題番号:2025Q-012 日付:2026/03/12
研究課題古代日本語述語体系記述のためのテンス・アスペクト・モダリティ・証拠性概念の再検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 仁科 明
研究成果概要

今年度は、研究代表者がこれまで継続的におこなってきた古代日本語の述語形式とその体系に関する総まとめの意味もあり、1)これまで論じ残してきた過去に関わる形式群「き」「けり」「けむ」「けらし」(上代語)の検討と、研究代表者の考える古代日本語の述語体系の全体像との摺り合わせの議論、それと並行して、2)研究代表者の考える述語体系の議論と、述語の意味範疇として想定される「テンス」「モダリティ」「証拠性」とのかかわりにかんする検討とをおこなった。

1)「き」「けり」については、これまでも研究が多く蓄積されてきている。近年の研究では、「けり」を「過去」をあらわす「き」とは異質のものとして位置づけることが多くなっているようである(鈴木泰『古代日本語時間表現の形態論的研究』ひつじ書房2009、野村剛史「上代ケリの諸相」『万葉集研究39』塙書房、2019など)。また、もちろん、「けむ」「けらし」は過去の内容をあらわすものの、モダリティや証拠性の形式として位置づけられるのがふつうである。しかし、とくに上代語では、四形式の使用はかなり複雑にからまりあっているようである。そうした複雑な様相を記述し、説明することを目指した。

2)研究代表者は、古代語の述語を、「現実(過去・現在)/非現実(未来・可能性)」の軸と、「確言(確かなこととして主張する・主張に根拠がある)/臆言(想像的に述べる・主張に確たる根拠がない)」の軸によって整理できると考えている。述語の意味カテゴリとして想定されてきているテンス、モダリティ、証拠性といった概念は、こうした区別からあらわれてくる意味であると理解できる。

 今年度、これらの議論をも踏まえて、著書を刊行した(研究成果欄を参照)。1)の成果は、論文(第二部第二章第一節)としてこれに収められ、2)の成果も第一部総論など各所に活かされている。