表題番号:2025Q-002 日付:2026/04/01
研究課題国境炭素価格の制度設計とCO2排出削減効果:各国の気候変動対策に与える効果の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 有村 俊秀
(連携研究者) 政治経済学術院 助手 Xiao Yaue
(連携研究者) 総合研究機構・環境経済経営研究所 招聘研究員 武田史郎
研究成果概要
本年は、国境炭素価格の制度設計とCO2排出削減の効果を分析するために、応用一般均衡分析の構築を行った。その第一歩として、日本における排出量取引制度(GX-ETS)の導入効果を分析するため、2015年の多地域産業連関表を基礎に逐次動学CGEモデルを構築した。モデルでは、排出上限を固定して炭素価格を内生的に決定する場合と、炭素価格を固定して排出量を決定する場合の双方を分析可能とし、資本蓄積や技術進歩を考慮した中長期的な政策評価を行った。

政策分析では、2026年に4,300円/t-CO₂から開始し年率3%で上昇する炭素価格を設定したETS導入シナリオと、導入しないベンチマークを比較した。その結果、GDPへの影響は最大でも約-0.05%と極めて小さく、経済への負担は限定的である一方、排出削減効果は年間1%未満、2035年時点で約7%の削減にとどまることが示された。

産業別には、導入初期は火力発電部門が主要な削減主体となるが、資本更新の進展に伴い、鉄鋼や化学など製造業の削減寄与が拡大する。また、炭素価格により化石燃料から電力への転換(電化)が進み、産業の直接排出は減少する一方、電力需要の増加により電力部門の負担が増大する可能性が示唆された。

以上より、現行の価格水準では経済影響を抑えつつ一定の削減効果は得られるが、より大幅な排出削減には炭素価格経路の見直しや再エネ支援などの補完政策が不可欠であると結論づけられる。