表題番号:2025N-002 日付:2026/02/11
研究課題異元素ドープ粘土鉱物を基とした光触媒複合体の合成とその水素生成への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 笹木 圭子
(連携研究者) 創造理工学部 助教 蔡 文安
研究成果概要

本研究では、不導体で2次元構造を特徴とする粘土鉱物に異元素ドープをすることにより、これを基とした光触媒複合体の開発をめざした。粘土鉱物は、地球表層環境に普遍的な構成成分であり、元素ドープ条件を最適化することにより光触媒として機能化できる潜在性が高い。天然粘土鉱物モンモリロナイトを酸洗浄し、層間挿入されている陽イオンを水素イオンに置換した後、既知量のFe3イオンをドープし、これを基盤としてTi butoxideを前駆体として、水熱合成法により、TiO2(アナターゼ)を結晶化させて、複合体を合成した。光触媒の特性値として重要なバンドギャップは、複合化によりわずかに縮んだにすぎなかったが、フォトルミネッセンススペクトルのピーク強度は複合化によって明らかに低下した。逆二重励起光音響分光法により、合成した複合体の電子トラップ密度分布を測定し、同様の合成法によるTiO2単体と比較したところ、前者は後者の約80%の電子トラップ密度しか示さなかった。このことは光照射により励起したFe3ドープしたモンモリロナイト側の電子がTiO2側の正孔を埋めた結果TiO2側の励起電子密度が小さく検出されたものと考えることができ、複合体には異種材料間の接合が形成されていると推定できる。この複合体は可視光源照射下でのCr(VI)還元反応の擬一次反応速度定数を有意に増大させた。一方、Fe3+イオンがTiO2側にドープされている場合には、TiO2単体と同様で、反応活性の増強は見られなかった。しかし、紫外光照射下での水素生成反応については活性の増強が認められず、さらに精査が必要である。本研究により、粘土鉱物を基とした光触媒複合体は、粘土の鉱物の高い陽イオン交換能を利用して、価数の高い遷移金属イオンをドープすることによって、少なくとも可視光照射下での光触媒反応においては、単なる支持体ではなく、ヘテロジャンクションによる励起電子の輸送に関わり、活性の増強をもたらすことを確認した。