| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 會津八一記念博物館 | 助手 | 有村 元春 |
- 研究成果概要
本研究は、後期青銅器時代(紀元前1600〜1200年頃)の東地中海世界における地域横断型の穀物供給ネットワークの実態を、文字資料と考古資料の統合的分析によって解明することを目的として実施したものである。
従来、このネットワークの途絶がいわゆる「紀元前1200年の崩壊」の主要因の一つとして言及されてきたが、それがいかにして発展して途絶に至ったのかについての具体的な状況は不明瞭なままであった。本研究ではこの問題を克服するため、広域的かつ通時的な視点から検討を行った。
文字資料については、当時のギリシャを中心として用いられていた線文字B、そしてアナトリアのヒッタイト王国で用いられていたヒッタイト語、ウガリト王国のウガリト語、西アジアで利用されていたアッカド語、そしてエジプトの古代エジプト語のものを対象とした。ここでは穀物生産や穀物輸送に関する記録を網羅的に集成し、データベースを構築した。考古資料については、穀物貯蔵施設と見られるサイロや大型ピットを主とした遺構に着目し、東地中海周辺の事例を集成した
現段階では分析は途中の段階にあるが、当時の地域を越えた穀物の移動は、2国家で行われる単純な輸出入ではなく、複数の国家が関与する複雑なネットワークによって実現されていたことが窺える。また、各地域における貯蔵能力や管理体制の差異も明らかとなってきている。特に当時の大国家の一つであるヒッタイトの興亡についてはこの穀物生産・獲得が大きく関わっているように見受けられるため、今後重点的に深掘りしていく必要があると考えている。
本研究は、東地中海世界を俯瞰する形で穀物供給ネットワークの実態を初めて具体的に示すことができる点に大きな学術的意義があり、同時に危機下における古代社会のレジリエンスを考える上でも重要な知見を提供するものである。引き続き検討を進め、成果発表に繋げていく。