表題番号:2025E-032 日付:2026/04/02
研究課題ボルネオ島の外来採集者集団の経験知を活用した天然沈香の枯渇リスク地域の特定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助手 佐野 洋輔
研究成果概要
 日本の香文化と原産地社会の暮らしを支えてきた天然沈香は、従来より資源枯渇が懸念されてきた。本研究は、ボルネオ島インドネシア領の広域で天然沈香採集に従事してきた外来採集者集団の経験知を活用し、天然沈香の枯渇リスクが高い樹種と地域を特定することを目的として実施した。当初予定していた外来採集者集団への現地調査は実施できなかったが、天然沈香の原産地である先住民社会において現地調査を実施し、以下の成果を得た。
 第一に、先住民社会での現地調査を通じて、天然沈香の枯渇リスクを評価する上で、先住民社会の沈香採集経験に基づく地域的な情報も有用であることが明らかになった。これは、外来採集者の経験知のみならず、先住民社会の伝統知を組み合わせて評価する必要性を示す成果である。
 第二に、外来採集者集団に関する過年度の現地調査を含め、これまで蓄積してきた研究データを整理し、天然沈香をめぐる採集と保全の実態に関する【論文1】(博士論文)をとりまとめた。これにより、外来採集者集団の経験知が天然沈香保全にどう寄与しうるのか、現行の管理制度も踏まえて体系的に整理できた。
 第三に、本研究を発展させる形で新たな研究課題を構想し、科研費(若手研究)に採択された。具体的には、「伝統知・経験知・科学知を統合したインドネシアの天然沈香管理モデルの構築」という研究課題として、今後4年間にわたり取り組む予定である。
 以上より、本研究は当初計画の一部を次年度に持ち越しつつも、天然沈香管理における複数の知の統合という研究課題の重要性を明確化し、今後の本格的研究の基盤を整備した。