| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 助教 | 五ノ井 祐二 |
| (連携研究者) | 早稲田大学 | 教授 | 野崎 達生 |
| (連携研究者) | 九州大学 | 教授 | 今井 亮 |
| (連携研究者) | 九州大学 | 准教授 | 米津 幸太郎 |
- 研究成果概要
現生の海底熱水鉱床である沖縄トラフ伊是名海穴から産出する緑泥石を含む変質火山岩について,岩石薄片を20枚以上作製し,観察を行った.その結果,変質岩中に含まれる緑泥石は,基質を交代するものが大多数であることが判明した.これらの緑泥石の中から,早稲田大学設置の電子線マイクロアナライザ (EPMA) を用いて化学組成を分析するものを抽出した.緑泥石は同一粒子内においても組成変化がみられるため,最低でも2点分析点を決定した.分析点は合計500点にもおよんだ.今年度中に,主成分分析に加え,東京大学大設置のレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置 (LA-ICP-MS)を用いて微量成分の分析を行う予定である.それにより,深度ごとの主成分と微量成分の変化が追跡でき,鉱床中心へのベクトルが確立されることが期待される.
福岡県八女市星野村の金鉱床地域を調査し,興昌星野鉱床において,露出する鉱脈を中心に鉛直方向および水平方向に変質安山岩を採取した.15枚以上の変質岩の薄片観察から,産出する緑泥石は,初生造岩鉱物の輝石や角閃石の斑晶を交代するものが多く,粒子全体を置換していた.すなわち,化学組成分析に適した緑泥石が多量に存在することが明らかとなった.また,これらは初生斜長石を交代するイライトや氷長石と共存していた.今年度中に,先述のEPMAおよびLA-ICP-MSを用いて,緑泥石の主成分および微量化学組成の分析を行う.それにより,興昌星野鉱床の主要鉱脈を中心に鉛直方向および水平方向の緑泥石の化学組成の変化が明らかになることが期待される.
上述の結果から,海底熱水鉱床および浅熱水鉱床における緑泥石の微量成分の変化が明らかになり,元素移動機構の一つが解明されることが期待される.また,温度依存性をもつ微量成分が見いだされ,新たな緑泥石地質温度計の開発につながることが期待される.