表題番号:2025E-003
日付:2026/04/03
研究課題より現実的な人間観に根差した契約主義理論の構想
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 政治経済学術院 政治経済学部 | 助教 | 押谷 健 |
- 研究成果概要
- 本研究の目的は、現実の政治的・社会的問題に対して、実効的な規範的指針を提示しうる契約主義的規範理論を構築することである。ジョン・ロールズやT.M.スキャンロンらによって提唱された契約主義理論は、これまで過度に理想化された前提に基づいているため、実際に人々が直面す実践的課題に対する含意が乏しいとして批判されてきた。そこで本研究では、従来の契約主義に代わる、より現実的な人間像に根差した理論を提示することによって、こうした問題を克服することを目指す。本年度は、上記の目的に対して主に二つの観点からアプローチし、一定の研究成果を得ることができた。第一に、契約主義から導かれる規範的判断に対して、人々が従うことができる条件とは何か、という問題に取り組んだ。契約主義によれば、政治的共同体のメンバーは、他者に対して理に適った仕方で正当化可能な行為をすることが求められる。しかし、現実の人々は、他者に対して正当化可能な行為を行うこと以外にも、さまざまな動機を有している。したがって、契約主義が実際の社会における実効的指針となるためには、このような多様な動機を調和させる社会制度を実現することが必要である。以上の考察の成果は学術論文としてまとめ、哲学分野の有力な国際誌に投稿した。第二に、契約主義的な推論手続きを具体的な規範的問題に応用する研究に取り組んだ。とくに、多数の人々の幸福を最大化するために少数の人々に多大な負担を強いることが正当化されうるのはどのような場合か、という問題を契約主義の観点から検討した。以上の考察の成果は、東南大学で開催された大規模な哲学の国際学会などで報告し、論文化に向けた有益なフィードバックを得ることができた。