| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 政治経済学術院 政治経済学部 | 助手 | 川太 悠史 |
- 研究成果概要
本研究は、国内製造業企業を対象に、人事データと研修・e-learning受講履歴等の企業内データを用いて、企業内人事施策が従業員のリスキリングを促すか、また従業員が「キャリア自律」を前提にどのように受講行動を意思決定するかを明らかにする。具体的には、制度改革の前後で異動・配置がどのように変化したか、e-learning等の受講が異動確率や職務配置に与える影響、受講者の属性や投資先スキルの違いを実証的に検証し、日本企業に適したリスキリング施策設計に資する知見を提示する。
当初は共同研究先企業からのデータ移管が大幅に遅れ、分析準備に遅延が生じたが、先方との定例ミーティングを経てデータの提供範囲を拡張し、当初予定していた人事・研修データに加えて、e-learningの利用時間・受講科目など詳細なログデータの提供が確定した。これにより受講量を精緻に変数化でき、受講意欲・キャリア志向指標と組み合わせた研究デザインを具体化した。加えて、企業内の人的資本投資ログを人事配置と結合できる点は希少で、学術的にも貴重なデータ基盤である。
今後は、
・制度改革前後の比較と、異動・配置の変化を利用した因果推定により、施策がリスキリングと社内流動性に与える効果を推定する。
・属性別(年齢・勤続等)の期待収益や制約の違いを踏まえ、受講・スキル選択の意思決定メカニズムを解明する。
・一般職の廃止(職群制度の見直し)という社内施策について、その導入が人材配置・昇進機会・賃金プロファイル・研修受講行動に与える影響を効果検証として併せて行う。とりわけ、従来の職群が担っていた役割分担やキャリアパスの変更が、従業員のキャリア期待と人的資本投資インセンティブをどのように変化させたのかを、制度変更前後の比較や職務・部門間の異動パターンの変化を用いて検証する。
・さらに、上司との面談アンケートを用い、テキストデータ分析により、受講意欲やキャリア観の形成過程、制度改革への受け止めと受講行動の関係を補足的に明らかにする方針も検討中である。
成果は学会報告と査読誌投稿につなげるとともに、DX推進下で顕在化するスキル需給ミスマッチへの対応として、企業内教育投資の有効性と限界を定量的に示し、産業界・政策議論にも還元する。