表題番号:2025C-781 日付:2026/03/30
研究課題日本語話者の接触場面におけるコミュニケーションを通じた人間関係構築の基盤研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 日本語教育研究センター 助手 莫 冠シン
研究成果概要

 本研究は、接触場面における日本語話者の人間関係構築過程に着目し、関係構築およびその停滞・変容が、会話におけるコミュニケーションといかに関わるかを明らかにすることを目的として実施した。日本語を使用する話者同士による自由会話を対象に、同一ペアの会話データを縦断的に収集し、各回終了後には再生刺激法を用いたフォローアップ・インタビューを行った。

分析の結果、初期の会話では相互理解を志向する情報交換的な話題展開が多く見られる一方、接触を重ねるにつれて、話題の選択や展開、自己開示のあり方に変化が生じることが確認された。特に、関係構築が必ずしも直線的に進行するのではなく、関係の模索や停滞が生じる局面において、話題回避や応答の簡略化といった対人調整としての相互行為的特徴が現れることが示唆された。これらの現象は、関係構築の停滞や距離調整といった過程が、参加者の相互理解や関係認識と密接に関わりながら展開していることを示している。

 以上の知見は、接触場面における人間関係構築を相互行為の中で生成・調整される動的な過程として捉える視座を提示するものである。また、日本語教育におけるコミュニケーション研究に対して、関係構築の成功例のみならず、停滞や模索といった現実的な相互行為のあり方を含めて再検討する必要性を示す点で意義を有する。

 本研究の成果の一部は、日本語教育学会および社会言語科学会における研究発表を通じて学外に共有している。さらに、本助成によって得られた分析成果をもとに論文投稿を行い、現在は査読コメントを踏まえた修正を進めている。今後は、本研究で得られた知見をもとに、縦断的会話データの分析結果を論文としてまとめるとともに、接触場面における人間関係構築研究の理論的整理を進め、日本語教育におけるコミュニケーション教育への応用可能性についても検討していく予定である。また、本研究の成果を基盤として、外部資金研究への展開を視野に入れた研究の発展を図る。