| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 国際学術院 国際教養学部 | 教授 | 上杉 勇司 |
- 研究成果概要
1. 学会報告および出版計画
2026年1月、国立台湾大学で開催された国際学会「The 8th ABRN Conference - Negotiating Asian Borders」に参加し、“From ‘Fortress’ to ‘Hub of De-Escalation’: Okinawa’s Subnational Peacebuilding in Taiwan Strait Crisis Management”と題する研究発表を行った。本報告では、台湾海峡情勢の緊張緩和における沖縄県の主体的な役割を検討した。発表内容は、同パネルの報告者らとの共同編著として、Palgrave/Springer社より英文書籍として刊行予定である。
2. 海外・国内調査の実施
本研究の深化を目的に、台北の遠景基金会(The Prospect Foundation)を訪問し、賴怡忠執行長らと意見交換を実施した。さらに同年3月には沖縄県を訪問し、沖縄県庁関係者や沖縄平和協力センター等の実務機関へのヒアリング調査を行った。これらの調査を通じ、政府レベルの安全保障政策と自治体レベルの平和構築策の整合性および相違点について、多角的な知見を得た。
3. 研究の総括と課題
調査・報告の過程で得られた主要な知見は以下の通りである。
安全保障の現状と評価: 日本政府による「南西シフト」に伴う防衛力強化は、台北側から一定の評価を得ている。特に米軍基地の存在は、沖縄県民の意向と乖離しつつも、抑止力として重視されている実態が浮き彫りとなった。
地域外交(Sub-national Diplomacy)の可能性と懸念: 沖縄県が対話のハブとして緊張緩和に寄与する構想自体には広範な賛同が得られるものの、認知戦が展開される現状において、不用意な働きかけがもたらすリスクや実現可能性への懸念も示された。
今後の展望: 地方自治体が国家外交を補完・相対化する「地域外交」の効用と限界を理論的に整理し、実際の政策に反映させることは、地政学的要衝における危機管理において緊要な課題である。
なお、本研究成果の一部は、シェルター整備等の課題に関連して東京新聞の取材に応じるなど、社会発信にも努めた。