表題番号:2025C-734
日付:2026/02/26
研究課題「ニーベルンゲンの歌」における二人の女性像
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 教授 | 石井 道子 |
- 研究成果概要
『ニーベルンゲンの歌』のブリュンヒルトとクリームヒルトは、どちらも未婚女性として登場し、それぞれ王との婚姻を結ぶ。二人の、未婚女性から成人になる過程での変化に違いがみられる。ゲルマン神話の女神がモデルであるブリュンヒルトは物語途中で姿を消す。他方、クリームヒルトは新たな時代、つまり13世紀ドイツ宮廷社会における女性の理想像を具現化している。最近の研究からは、この観点からクリームヒルトの行動の革新性が注目され、再解釈が行われている。古い価値観をまとうブリュンヒルトが物語中に居場所を失うのに対し、最終的に物語を牽引するのはクリームヒルトである。彼女は保護者である王や騎士たちに全面的に復讐をし、犠牲を払って物語に区切りをつける。意志を見せず伝統に従う娘として登場した娘クリームヒルトが、物語の過程でブリュンヒルトの代理をするかのように、能動的な女性像に変貌する。
中世文芸における能動的な女性像のもう一つの源流はギリシア・ローマ神話のヴィーナスである。本研究に付随する研究成果とし、ヴィーナスが中世の恋愛詩・恋愛描写にどのように扱われているかを資料翻訳として発表することができた。ヴィーナスと、ブリュンヒルトおよびクリームヒルトの比較については、残念ながら触れる余裕がなかった。本研究は今後も神話と宮廷的女性像という観点から継続していく予定である。