表題番号:2025C-728 日付:2026/04/01
研究課題香川県高松市旧笠居郷の神社本殿建築の実測調査に基づく宮大工久保田家の技法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助手 泉川 時
研究成果概要

 本研究は、令和6年度の研究調査の後継事業である。令和6年度に香川県高松市旧笠居郷の宇佐八幡宮随神門の調査を小岩正樹研究室と共に行い、報告書としてまとめた。この報告によって、宇佐八幡宮随神門の建築・文化的価値を明らかにした。また全国および県内の八脚門との比較を通し、建築的特徴を見出すとともに、設計に携わった地域の堂宮大工、久保田家の営為に着目し、更なる調査の必要性を説いた。以上の事柄を調査の発端とし、本調査では久保田家が設計に関与したと考えられる神明神社本殿と三和神社本殿を対象に定めた。

 神明神社は香西成資『南海通記』によると宇佐八幡宮と同時期に勧請されたとする史伝がある。対して三和神社は、江戸期に釣浦の恵比須神社が賀茂神社に合祀された後、明治40年(1908)、41年に今宮神社・賀茂神社がそれぞれ海神社に合祀され、42年に氏子円満のため三和神社と改称され成立した。

 久保田家が代々受け継いできた設計技術のひとつに扇垂木の手法がある。神社本殿の垂木形式は流造・入母屋造問わず、平行垂木を用いることが大半である。平行垂木とは垂木を互いに平行に配す技法を指し、対して扇垂木は垂木を放射状に配す技法を指す。神明神社本殿および三和神社本殿では正面を平行垂木に、側背面を扇垂木とする共通の形式をとる。一般的には神社の本殿建築に扇垂木を用いることは珍しく、大きな特徴であると言える。

 類例調査では神明神社・三和神社と合致する垂木形式をもつ遺構は複数確認されたが、腰組形式など、その他構造・意匠的特徴まで合致する遺構はなかった。また脇障子に角度をつけて立てる事例も確認でき、大床・浜縁下の造作にも様々な形式があることがわかった。