表題番号:2025C-712 日付:2026/03/24
研究課題実験厚生経済学
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 講師 川中 大士朗
研究成果概要
 本研究の目標は、標準的な経済学の仮定から逸脱する意思決定者の厚生を実験的手法を用いて評価するための理論的基盤を構築することである。今年度はまず、意思決定者の選好と信念の識別に関する理論的基礎について分析した論文をまとめ、国際誌に投稿した。採択には至らなかったものの、査読者から有益なコメントを得られたため、それらを踏まえた上で理論を再構築するための方針を得ることができた。さらに、こうした理論的基盤を踏まえた上で実験計画を立て、学内外の研究者と実験計画についてディスカッションすることができた。特に「実験厚生経済学」という研究テーマのモチベーションや必要性について研究者間で合意形成をすることができると同時に、理論に基づいた実験手法について議論することができた。
 また、標準的な経済学の仮定から逸脱する「行動経済学」的な意思決定者に関する厚生分析の派生的応用として、ベルトランモデルを分析する論文を書いた。この論文はApplied Economics Letters誌に投稿され、2026年2月に採択された。この論文では一部の消費者が正しくベイズ推論できないと仮定した上で、情報の非対称性のあるベルトラン市場を分析しており、ベイズ推論に関する限定合理性のパラメータが均衡における厚生に与える影響を分析し、厚生的・政策的含意を得ている。ただしこの論文において用いた厚生概念には議論の余地があり、この論文で分析した状況における厚生概念の定義については今後の「実験厚生経済学」の研究の課題としたい。以上により、本年度は理論面・応用面の双方で研究基盤を前進させ、次年度以降の実験実施に向けた準備を整えることができた。