表題番号:2025C-683 日付:2026/04/04
研究課題近代群集論における知識人イデオロギーに関する学説史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 土屋 淳二
研究成果概要
本研究は,近代日本社会学に内在する知識人の民衆観と政治思想に関する考察を当時の群集論の系譜から読み取ることを目的としている.具体的には,近代国家の形成過程における危機と秩序再編にみる歴史的特殊性に思想的背景を背負いながら,一個の個別経験科学として自己意識化されていった明治・大正期にまたがる草創期日本社会学の系譜を辿り,爾後の激動期での社会騒擾や民衆暴動に対する危機意識から大正民本主義運動や知識人運動等へと導かれた社会変革論と,社会統制や秩序維持の保守体制論との力動的な対立構造の枠組みにおいて内発する視座の特質を再度精査し,現代のポピュリズム研究における社会学理論の思想的源流と知識社会学上の問題位相を討究することが,喫緊の課題となっている.現代のポピュリズム論で議論される反エリート主義や反知性主義に関する社会学理論自体に内在するイデオロギー批判のあり方について,近代社会学の成立期にみられる思想的源流にまで遡り,知識社会学の観点から追究することが課題となっている.そのような学問的要請から,本研究では,近代欧州の群集論の系譜展開にみる論点と視座の特質を整理することで,近代社会学が内在させてきた民衆運動に対する思想的基盤を掘り起こすことを狙いとしている.近代化途上の伊仏で興隆した群集論が,当時の保守派知識人たちの同時代への鋭い危機意識を反映していたこと,現代のポピュリズム研究の抱える知識人のイデオロギーやエリート主義に関する論点が,近代日本社会学にすでに内在していることを知識社会学的に追究することを試みた.