表題番号:2025C-680 日付:2026/02/04
研究課題『恵日古光鈔』の基礎的調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 講師 武本 宗一郎
研究成果概要

日本仏教学領野において、中世三論宗の論義に関する実態は解明の途上にある。本研究では、永村眞氏によって中世三論宗の重要論義書であることが指摘されながらも、未だ全く解明が進んでいない『恵日古光鈔』(鎌倉時代成立)を取り上げて、基礎的な研究を実施した。

第一に、『恵日古光鈔』の東大寺図書館所蔵本と三康図書館所蔵本の文献学的に調査を行い、両本を対校させて校訂された本文を作成した。第二に、校訂本文を基に、収録される論義に対する考察を行った。この際、玄叡『大乗三論大義鈔』や珍海『三論玄疏文義要』といった平安時代初期~院政期の学匠の著述との間で議論内容の比較・分析を行いつつ、『恵日古光鈔』以後の論義を参照することで、三論宗の論義形成の一端を描出した。

この成果の一部を、仏教思想学会第41回学術大会(202575)にて「中世南都仏教における『提謂経』」と題して発表した。取り扱った『恵日古光鈔』の論義は、東大寺図書館蔵『恵日古光鈔』巻四(三四丁左~三五丁左)、三康図書館蔵『恵日古光鈔』巻五(五一丁左~五三丁左)にあたる。当該論義が、三論宗の論題「二蔵判教」の『提謂経』の位置づけに関する部分であることを、文化七年(一八一〇)に成宥(生没年不詳)によって写された、東大寺図書館蔵『三論宗論義集』(六二丁左~六六丁左)の「二蔵判教」の議論内容を参照して論じた。なお、『三論宗論義集』所収の「二蔵判教」では、『提謂経』を声聞蔵と判属することについて、『法華経』妙荘厳王本事品に小乗の法眼浄の得益があるからといって『法華経』を小乗教としないことを例に挙げて、得益によって経典の摂属を定めないとの旨を論じている。

以上の研究内容を踏まえて、今後は『恵日古光鈔』に収録されるその他の論義題に関しても分析を進める。