表題番号:2025C-675 日付:2026/03/18
研究課題第三次フード・レジュームにおける「生活市場主義」の展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 箕曲 在弘
研究成果概要

現代の農林産物を取り巻く状況は極めて混沌としている。多国籍企業によるフードビジネスの台頭がもたらす土地収奪やサプライチェーンの統合・寡占化、フェアトレード認証、有機認証、FSC認証、RSPO認証といった人権や環境への配慮を謳う第三者機関による認証制度の乱立、近年のEUDRなどの国際的規制の強化といった動向は、消費者側の意向が強く生産者側の生活に影響を与える。

こうした近年の農林産物をとりまく市場の変化への抵抗としての農をめぐる運動も同時多発的に世界中で展開している。こうした運動は農の担い手の主体性が強く発揮され、人々を巻き込む大きなうねりとなっている。しかし、他方でこのような強い主体性が発揮されないような場合においても、激変する市場の変化に柔軟に対応しようとする小規模農家の実践がみられる。

本研究では、「農の運動」としては見過ごされてきた農村社会における「農民の論理」と「市場の論理」の結びつきに注目した。そして、このような結びつきに着目する立場を「生活市場主義」と名付けて、複数の事例をもとに、この概念の意義と可能性について検討した。

本研究期間に実施したのは、次の2点である。

第一に、202511月上旬には、東南アジアのタイにおいて資料収集を行った。まずダムロン図書館とサイアムソサエティにおいてラオスの農村住民の生活実態に関する文献収集、次に貨幣博物館においてタイにおける貨幣の歴史に関する情報収集を行った。

第二に、2026年1月10日には、現代文化人類学会第27回シンポジウム「グローバル・コモディティの取引における生活市場主義とは何か?」を実施した。申請者がシンポジウムの企画者となり、趣旨説明を行った。同シンポジウムでは、東南アジアやラテンアメリカの農村社会でフィールドワークを行っている3名の人類学者と、農の社会運動の研究とアフリカ農村研究の専門家をコメンテータとしてそれぞれ招聘した。

申請者を含めこのシンポジウムの登壇者4名は、『文化人類学研究』第26巻の特集枠において論文を掲載することになっている。20269月末に原稿提出、20271月に刊行予定となっている。