| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 法学学術院 法学部 | 講師 | 内藤 識 |
- 研究成果概要
本研究は、行政における自動化された意思決定(ADM)が、多くの便益をもたらす一方、公平性・透明性・平等原則には緊張関係があるという問題関心のもと行った。本研究では、デンマークを中心とした北欧諸国の議論を比較法的に検討し、日本法への示唆を得ることを目的とした。
本年度は、日本公法学会での個別セッションにおいて、「行政における自動化された意思決定と平等ー北欧における状況を参考として」と題する発表を行った。その概要は以下の通りである。
行政における自動化された意思決定(ADM)の技術はルールエンジン・決定木・深層学習など多様であり、技術の種類によってリスクの性質が異なる。デンマークでは二つの失敗事例が確認された。グランドサクセ自治体の子どもリスク発見システムは、民族・市民権と相関する指標を用いたとしてEU差別禁止規定に抵触しうるとの批判を受け開発が中止された。政府債権の自動引落システムは法律内容の実装不備により廃止に至り、税金の無駄と市民の法的安定性の侵害という批判を招いた。これらの反省から2018年以降「デジタル化対応立法」が推進され、裁量のない判断には自動化を積極的に活用しつつ、福祉的・複雑な判断へのADM適用は明示的に禁じるという方針が確立されている。
日本における具体的な場面での検討においても、裁量の有無を軸とした自動化の適否の類型化、法規範とコードの整合性確保の制度化、平等原則・間接差別への対応が重要と思われる。他方、日本とデンマーク・北欧諸国との間には、①利用可能な技術を提供する企業の規模・多様性(この点、日本の方が進んでいると評価することができる)、②デジタル行政インフラの成熟度、③法文化的背景など多くの相違点があり、デンマークにおけるモデルを直接移植することが適切とは言えない。
今後は、日本の法秩序と背景に即した規範的枠組みの提言を目指したい。