| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 政治経済学術院 政治経済学部 | 助手 | 楊 心悦 |
- 研究成果概要
本研究は、ディマンド・リスポンス(Demand Response:DR)施策における政策デザインの有効性を定量的に評価するため、電力需要調整に対する受入補償額(Willingness to Accept:WTA)を分析した。今年度は、電力消費を太陽光発電時間帯へシフトさせる「上げDR」と、電力消費総額を抑制する「下げDR」の2種類に着目し、アンケート調査を通じて収集したデータに基づき、離散選択モデルを用いた定量分析を行った。
アンケート調査では、対象者を上げDRと下げDRの2グループに分け、異なる報酬条件下での電力需要調整への参加意向を尋ねた。各グループに対し、異なる報酬額を提示する10個のセグメントを設定した。分析の結果、無報酬時と比較して、上げDRグループでは報酬額の増加に伴い参加意向が上昇した一方、下げDRグループでは報酬に対する反応が限定的であった。具体的には、離散選択分析の結果によれば、報酬額が100円増加するごとに、上げDRへの参加確率は約1%上昇することが示された。この結果は、上げDRが消費者の電力を太陽光発電時間帯へとシフトさせる効果を持つことを示唆している。
下げDRにおいて明確な効果が見られなかった要因として、節電が生活の利便性に及ぼす負の影響が考えられ、上げDRと同程度の報酬額では節電行動を十分に促せない可能性が高い。節電を目的とする下げDRに対し、上げDRは電力消費の絶対量を減らすのではなく、消費時間の変更を通じて再生可能エネルギーの有効利用を図るものである。家庭にとって、節電よりも消費時間のシフトの方が受容しやすく、家電の使用頻度を維持したまま目標を達成できる利点がある。以上より、太陽光発電の普及に伴い、下げDRから上げDRへの移行を推進することは、温室効果ガスの排出削減を促進する上で重要であるといえる。