表題番号:2025C-656 日付:2026/03/25
研究課題Ways of listening to the student voice in higher education: lessons from a cross-cultural partnership
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学総合研究センター 教授 井上 史子
研究成果概要
スチューデント・ボイス(Student Voice)とは、高等教育において学生の視点を取り入れることを目的とした様々な活動を指す言葉である(Cornelius-Bell et al. 2023)。筆者は、日本とオーストラリアのそれぞれの高等教育の文脈を活用した共同研究を通じて、教育や学習に影響を与えるためには学生と教職員の間に真のパートナーシップを深めることが重要であることを確認してきた。そこで、本研究では、日本において近年拡大している大学教育への学生参画について、オーストラリアの大学における学生参画活動との比較により検討することを目的とした。結果より、日本では学習者の視点を授業改善に取り入れるためFD活動などへの学生参加が奨励されているが、しかし参加は任意であることから積極的に関与する学生の数はあまり多くないといった課題が生じていること、オーストラリアの大学における学生参画はカリキュラム開発や授業内容へのフィードバック、課外プロジェクトなどに集中する傾向があること、日本における学生参画は個々の授業実践において学生と教員がペアを組むのとは対照的に、オーストラリアでは通常、授業に関するフィードバックは他の教員を交えたピアレビューという形で行われることなどが明らかになった。また両国とも学生と教職員の間の真のパートナーシップ(SaP)は、学習の質を高め、授業に関する省察を促し、学習者中心の教育を支援する手段として位置づけていることも確認できた。今後は、2025年より早稲田大学において大学院生を対象としたプレFDプログラムが開始され、研修を受けた大学院生が大学教育に参加することが期待されることから、SaPの概念をFD活動に体系的に組み込み、学習者中心の教育を推進できる大学教員を育成するとともに、教員と学生が共に学ぶ学習文化を醸成する実証モデルの構築を目指す予定である。なお本研究の成果は、2025年11月に開催されたISSOTL25において共同発表を行った。