表題番号:2025C-655 日付:2026/04/06
研究課題「隈本繁吉文書「台湾史料関係」の翻刻・分析および『日本植民地教育精政策史料集成』別集〔2〕「隈本繁吉文書(台湾編)」との比較」
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 歴史館 助手 江 永博
研究成果概要

1. 翻刻作業の進捗状況

今年度も継続して、隈本繁吉文書「台湾史料関係」の翻刻作業を行った。全41項目中、0820「台湾統治史 巻一 前紀(未定稿)第3編 日本と台湾との関係」および0821「台湾統治史 巻二 本紀ノ一(未定稿)」の2項目は未着手である。また、0819「台湾統治史 巻一 前紀ノ一 台湾ノ地理(未定稿)」および0839「台湾名号考草案」は作業途上であり、前者は3分の1、後者は半分弱程度の分量が残っている。これら4項目を除く日本語部分の翻刻作業については、概ね一段落した。


昨年度からの課題であった外国語筆記体および難読文字については、まず外国語筆記体を含む7項目を抽出し、海外経験豊富で英仏語に精通した専門家に内容確認を依頼した。残念ながら今年度は正式な翻訳作業の段階には至らなかったが、難読文字については5項目の調査を専門家に依頼し、その大部分を解決することができた。これら13項目の内容は、報告者による複数回の校読を経た上で専門家の知見を仰いでおり、そのまま公刊に供しても差し支えない水準に達している。

なお、史料の整理・分析の過程で、従来の植民地台湾の歴史編纂に関する先行研究では言及されてこなかった人物に焦点を当てることとなった。今後は関連史料の有無を確認し、さらなる深掘りを行いたい。

2. 『日本植民地教育政策史料集成』別集(2)との比較検討

『日本植民地教育政策史料集成』別集(2)「隈本繁吉文書(台湾編)」との比較について、同集成は全12集・119冊で構成され、別集(2)は7部・全13冊(第107〜119巻)から成る。その詳細は以下の通りである。

    Ⅰ. 教育行政全般(14点):第107〜109巻

    Ⅱ. 学務部日誌(6点):第110〜112巻

    Ⅲ. 公立中学校設置問題(12点):第113〜114巻

    Ⅳ. 「台湾教育令」制定関係(17点):第115〜116巻

    Ⅴ. 対岸教育問題(13点):第117巻

    Ⅵ. 教育勅語関係(16点):第118巻

    Ⅶ. 欧米教育視察(20点):第118〜119巻

上記の構成を鑑みると、同集成に未収録の「台湾史料関係」所収資料は41点に及び、分量としては最多の「Ⅶ. 欧米教育視察」の2倍以上に相当する。同集成の性質上、「教育」関連以外の史料が割愛されたものと推察されるが、これら41点を同形式で翻刻する場合、少なくとも4冊分に相当する分量になると考えられる。


実際に「隈本繁吉文書(台湾編)」第107巻を確認したところ、収録された8点の資料(「(秘)台湾ニ於ケル教育ニ関スル卑見ノ一二並ニ疑問」等)のうち、全文翻刻は2点に留まり、他は翻刻なし、あるいは付箋のみの翻刻であった。原資料の可読性に基づき画像掲載のみとしている可能性もあるが、翻刻の採否基準は必ずしも一様ではない。

一方で、翻刻された文書における欄外注、付箋、添削等の扱いについては、今後の翻刻形式を統一する上で非常に有益な示唆を得ることができた。未完成の4項目および外国語筆記体への対応とともに、来年度の重要課題としたい。