表題番号:2025C-641 日付:2026/03/29
研究課題基底状態探索のための量子アルゴリズム開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 准教授 白井 達彦
研究成果概要

組合せ最適化,量子物性,量子化学に対する量子アルゴリズムの開発に取り組み,とくに,エントロピーを量子計算に導入した部分空間生成技術に基づき,応用領域拡大を進めた.①制約付き組合せ最適化問題向けの圧縮量子アルゴリズムについて,エラーを伴う量子計算機に対する有効性の検証を,シミュレータおよび実機を用いて実施した(本成果の一部はIEEE Trans. Quantum Eng.で発表).その結果,現状の量子デバイスでは二量子ビットゲートエラーや測定エラーが主要な性能制限要因であることが明らかにし,実用化に向けた技術的課題を特定した.さらに,量子計算機の物理トポロジーを活用したスケーラブルな測定エラー緩和技術を確立し,量子計算機でその有効性を実証した(IEEE Internal Conference on QCE 2025で発表).②部分空間生成法に基づく量子準断熱操作により,量子多体系の有限温度物性を計算する量子アルゴリズムを開発した.エントロピーを指標に探索空間を制御し,有限温度状態に対応する部分空間を効率的に構成し,この部分空間上で量子ダイナミクスを実行することで,熱力学量を評価する枠組みを構築した.量子スピン鎖に対する理論解析および数値計算を通して,アルゴリズムの精度と計算コストの関係を体系的に調べた.具体的には,系の可積分性の有無や温度領域の違いが,性能に与える影響を明らかにした.とくに非可積分系では量子断熱性に由来する本質的な制限を示し,この課題の解決が重要であることを見出した.これらの結果は,量子多体系の有限温度物性計算に対する量子アルゴリズムの設計指針を与えるものである(本成果は,プレプリントarXiv:2510.13555で公開し,改訂中).