表題番号:2025C-628 日付:2026/04/09
研究課題中学・高校における効果的なマインドフルネス技法のプログラム開発のための予備的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 斎藤 翔一郎
研究成果概要
 近年、マインドフルネスを用いた心理技法は、ストレス低減や情動調節への高い有効性から教育現場での応用が期待されている。特に多感な時期にある中等教育現場においては、生徒の心理的レジリエンスや学習態度の向上に資する可能性があるが、学校教育の枠組みに適合した効果的なプログラム開発のための基礎的知見は未だ十分とは言い難い。
 本研究は、「中学・高校における効果的なマインドフルネス技法」の体系的プログラム開発に向けた第一歩として位置づけるものである。その初期段階の検証として、高校生を対象とした単回かつ短時間のマインドフルネス呼吸法が、認知機能の基礎である短期記憶に及ぼす即時的影響を検討した。本研究で得られる知見は、教育現場での実施可能性や介入の適切な強度を検討する上での重要な予備的データとなる。
 対象者は高校3年生12名であった。実験は集団法にて実施した。まず、preテストとして無関連な名詞20語をスクリーンに2秒間隔で提示し、対象者に記憶させた。その後、妨害課題として30秒間の単純計算を課し、直後に1分間の自由再生課題を行わせ、単語の再生数を記録した。介入として、3分間のマインドフルネス呼吸法を実施した後、postテストを行った。postテストではpreテストと異なる単語リストを用い、同様の手続きにて再生数を確認した。
 その結果、preテストとpostテストにおける単語再生数の平均値について検討した結果、両者の間に有意な差は認められなかった(t(11) = -0.29, p = .78, d = 0.24)。本研究で実施した3分間の介入が短期記憶を即時的に向上させるという仮説は支持されなかった。
 本研究の結果、短時間のマインドフルネス呼吸法による短期記憶の有意な向上は確認されなかった。しかし、効果量はd=0.24を示しており、介入による一定の傾向は示唆された。今後の課題として、研究が小標本かつ一度限りによる予備的研究であることを踏まえ、サンプルサイズを拡大し、十分な検定力を確保した上での再検証が必要である。また、3分間という介入時間が習熟に不十分であった可能性もある。今後は介入時間の延長や、継続的な実施による影響を検討するとともに、練習効果を厳密に制御するための統制群を設置した実験デザインによるさらなる検証が求められる。