表題番号:2025C-627 日付:2026/04/03
研究課題東アジア諸国における「国土」観と「辺境」化の比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 柿沼 亮介
研究成果概要
 本研究では、東アジア諸国においてどのように「国土」観が形成され、それによっていかにして「国土」の周縁部が「辺境」として認識されるようになったかの比較を行っている。「国土」とは主観的かつ情緒的が概念であるが、だからこそ、人々がどこまでを国家領域として自明視しているかという認識の表象となり得る。そこで「国土」を仮に、「自国の文化圏・経済圏が広がり、歴史的に自国の国家領域であることが必然であると認識される領域」と定義すると、歴史的に「国境」が伸縮する中で「国土」認識の形成と「辺境」地域の設定がどのように行われるかを検討することは、すなわち国家が「自画像」をどのように描いてきたかということを考証するものとなる。そこで、日本列島、朝鮮半島、中国の「辺境」地域について、それぞれの中央政府がいつの時代に「国土」として認識するようになったかを分析することにより、東アジア諸国の「国土」観と国家による「辺境」支配の共通点と相違点を明らかにし、ひいては東アジアにおける国家のあり方の普遍性と地域性を炙り出すことを本研究では目指している。
 この目的を達成するため、2025年度は、対馬、的山大島、平戸島、伊江島などの「辺境島嶼」において現地調査を実施した。平戸島では、五島列島との間の航海において志々伎山が果たしていた役割や、『肥前国風土記』にみえる「志式島之行宮」や古代国家による値嘉支配の様相について検討した。的山大島では、遺跡や伝承の少ない小規模な「辺境島嶼」において地域史を描く上での課題が明らかになった。伊江島では、国家と地域の間の緊張関係が聞き取り調査によって顕在化した。今後はそれぞれの島の「島嶼性」や「辺境性」を踏まえて、「本土」と「離島」をめぐる意識や「国土」意識の状況、さらにそれらの歴史的な形成過程を検討し、中国や朝鮮半島との比較を行っていく予定である。