| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科 | 教授 | 遠藤 環 |
- 研究成果概要
本研究では、タイ・バンコクを事例に、都市内格差の拡大と再編の状況を、主に所得と職業に注目して分析している。2010年代から、アジアでは地域間格差よりも都市内格差が拡大していることが指摘されてきた。タイも例外ではなく、2000年代以降、例えば、全国レベルでのジニ係数は改善してきたが、バンコクに限っては、ジニ係数が悪化し、格差が拡大してきている。2010年代中旬から一時は改善を見せたものの、2020年代に入り、再び格差は拡大傾向にある。具体的な分析では、共同研究者であるタイの共同研究者と協力し、まずは労働統計、家計調査の個票を活用して、格差拡大の傾向を確認した。労働市場の構造と再編が格差拡大に与えた影響を探るのが目的である。そのため、特にタイの労働市場の特徴に関して検証し、雇用の二極化が起きているのか、もしくは専門化が起きているのかについて検証することとした。また統計分析のみでは明らかにならない特徴を把握するため、フィールド調査を実施した。現在、英文ジャーナルに投稿する論文を執筆中である。
データ分析からは幾つかの特徴が明らかになった。第1に、タイの77県の内、バンコクの労働市場のみが1980年代以降、職種の多様化が顕著に進んでいる。第2に、圧縮した発展に伴う重層的な構造再編は、バンコクに凝縮して表れており、高い技能を必要とする職種と低技術職の両極において、バンコクへの集中度が高い。第3に、職種ではなく賃金から分極化の傾向を確認すると、より複雑な変化が見いだせる。そのため、バンコクの特徴に関する分析を深めるため、職種ごとに分類を作り、グループごとの分析を進めており、論文に反映させる予定である。ただし、タイの労働統計には、雇用の大部分を占めるインフォーマル経済従事者(主に自営業者)や経営者の収入・賃金情報が掲載されていないなどの制約が大きい。インフォーマル経済従事者の階層分析については方法を引き続き模索中である。