表題番号:2025C-573 日付:2026/04/03
研究課題濡れ感覚特性と体温調節反応の関係の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助教 加藤 一聖
研究成果概要

本研究は、効率的な体温調節に不可欠な「発汗」と、皮膚表面における「濡れ感覚」の相互作用を明らかにすることを目的としている。皮膚の濡れは、温度覚と触覚の統合によって生じる高次な感覚であり、その脳内メカニズムについては未だ不明な点が多い。本研究では、温度刺激(20°C、25°C、30°C)を用いた感覚提示により、濡れ感覚の強度変化に伴う脳活動を脳波および機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて計測し、濡れ感覚形成に関わる神経基盤を同定することを目指す。
本報告対象期間においては、主に「実験環境の構築」および「予備知見の収集と発信」に注力した。
まず、感覚提示および主観評価を精密に行うための実験プログラムを構築した。ペルチェ素子等を用いた温度刺激提示と、被験者による主観的な濡れ感覚強度の回答を同期させるシステムを完成させ、fMRIおよび脳波計測に向けたプロトコルの最適化を行った。
次に、構築したプログラムを用いて行動実験を実施し、予備的データを取得した。具体的には、皮膚温度に近い30°Cから温度が低下する(25°C、20°C)に従い、主観的な濡れ感覚が有意に増強されることを確認した。これは、先行研究の知見を再現するものであり、今後の脳機能計測において、濡れ感覚の強度相関を解析するための強固な基盤となるデータである。
また、本研究に関連する分野の学会、研究会 (CJK neuroscience meeting, 第16回多感覚研究会)へ積極的に参加し、これまでの研究成果および本計画の進捗について発表を行った。専門家との議論を通じて、マルチモーダルな感覚統合プロセスや、熱損失に関わる生理学的解釈について多角的な視点を得ることができ、今後の解析手法の精緻化に向けた有益な示唆を得た。
今後は、確立した実験系を用いて本実験(fMRIおよび脳波の計測)を本格的に開始する。行動データと神経活動データを組み合わせることで、特定の脳領域(島皮質や二次体性感覚野など)がどのように温度と触覚を統合し「濡れ」を創出しているかを明らかにする。さらに、得られた知見を統合し、濡れ感覚が発汗反応に及ぼすフィードバック効果の解明へと繋げていく予定である。