| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 講師 | 高橋 麻衣子 |
- 研究成果概要
障害のある者や外国にルーツを持つ者など,多様な市民を包摂する共生社会の確立が求められている。それに伴って,生活のガイドラインや緊急時に,多様な市民が文字で提示された情報を読み解くために,「やさしい日本語」の在り方が模索されている。外国語話者にとっては文章に使われている語彙を平易なものにすれば伝わりやすくなるが,知的発達に遅れがある場合には,語彙を易しくしただけでは理解が難しく,一文に使われている文字数を減らす,単文にする,学習言語ではなく生活言語を使うなど,話し言葉として文字提示するなど,「やさしい日本語」にするための工夫がさまざまに考えられる。
そこで本研究では,「やさしい日本語」を構成する要素はどのようなものかを解明する基礎的な調査を行った。300字程度の文章を10テーマ作成し,それぞれのテーマについて4種類(語彙の難度を下げる,単文化,話し言葉,(10歳の)子どもに対する文章)の「やさしい日本語」表現の文章を作成した。原文章ならびに4種類の「やさしい日本語」文章はすべて生成AI(Chat-GPT4o)によって作成し,人間によってファクトチェックを行ない,微調整をした。それぞれの文章について,日本語を母語とする100名の成人に対して文章に対する印象評定(「理解できたか」「記憶できたか」「興味をもったか」「読みやすかったか」「難しかったか」について5段階評定)と理解度テスト(4択の設問を5問)に取り組んでもらった。
その結果,原文を単文化した文章ならびに話し言葉に変換した文章に対する印象評定は原文のものとほぼ変わらないが,語彙の難度を下げた文章ならびに10歳の子どもに対する文章として生成された文章への印象評定が原文よりも有意にポジティブに評価されたことが示された。一方で,理解度テストの成績は文章の種類が異なっても有意な差は生じなかった。
以上から,「やさしい日本語」の構成要素としては「語彙の難易度」が大きく影響し,生成AIによって「やさしい日本語」に変換する場合には「10歳の子どもに対する文章にしてください」というプロンプトが有効であることが示唆された。