表題番号:2025C-570 日付:2025/11/10
研究課題非タンパク質性アミノ酸によるオートファジー作用メカニズム解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 講師 矢野 敏史
研究成果概要

オートファジーは不要なタンパク質や損傷した細胞小器官を含む細胞内成分の分解・リサイクルに寄与する機構であり、細胞の恒常性維持やストレス適応に重要な役割を果たしている。特に腸においては、炎症抑制や細胞の品質管理を通じて腸炎予防や寿命延長に寄与することが明らかになっている。タンパク質を構成しないアミノ酸には、タウリンやD-アミノ酸、代謝経路の中間産物などが含まれ、生体内で多様な生理機能を担っている。D-アミノ酸はヒトではほとんど産生されないが、植物や発酵食品などに含まれており、また微細菌も産生することから、生体内にその存在が確認されており、様々な生理作用を示すことで注目されている。一方、これらの非タンパク質性アミノ酸の腸における分子レベルの作用機序、特にオートファジーとの関連については不明な点が多い。そこで本研究では、非タンパク質性アミノ酸の成分ライブラリーを構築し、オートファジースクリーニングを実施した。D-アミノ酸やその類似体については、一部がオートファジーを活性化することを発見した。また、栄養飢餓によるオートファジーの主要な制御因子mTORC1への影響を解析し、これらの非タンパク質性アミノ酸の制御機構にmTORC1シグナルが関与しない可能性を明らかにした。本研究は、タンパク質を構成しないアミノ酸の新たな生理機能を解明し、腸疾患予防や健康寿命延伸への応用に貢献することが期待される。