表題番号:2025C-551
日付:2026/03/18
研究課題カント『純粋理性批判』第二版「超越論的演繹」の諸論点を抉り出す
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 千葉 清史 |
- 研究成果概要
- 本研究は、『純粋理性批判』における「超越論的演繹」の研究基盤を整えることを目的とし、これまでに問題とされてきた主要な論点を整理することを目指した。時間的制約のため、今回は特に第二版の「超越論的演繹」(以下、「第二版演繹」と略記)に関する問題に限定して検討を行った。
中心的な検討対象は Henry Allison、Lawrence Kaye、Alison Laywine、中野裕考らのモノグラフィーであり、必要に応じて関連論文も参照した。
第二版演繹に関して浮上した重要な解釈上の問題は以下の通りである。
(1) Dieter Henrich の指摘以降、いわゆる「二段階証明構造」は広く受け入れられているが、その「二段階」をどのように理解すべきかについては依然として定説がない。
(2) 第二版演繹 §26 の注における 直観の形式 と 形式的直観 をめぐる解釈は未解決である。
(3) 第二版演繹の困難は、一般に想定される後半部(§§21–25)よりもむしろ前半部(§§15–20)に所在する可能性が高い。とりわけ前半部が果たす役割について、解釈者間に深刻な相違が存在する。以上の点から、当該箇所における主要な解釈上の問題点を特定した。
現時点で、こうした諸問題についての解決の糸口を見出すには至っていないが、おそらくはカントの「表象Vorstellung」概念を掘り下げること、そして第二版演繹の§17における「客観Objekt」、ならびに第一版演繹A104-5で展開される「客観Gegenstand」についてのカントの考察を精査することがそのために役立つだろう、との見通しを得た。以上をもって、本研究は将来の研究に向けた基礎固めとして一定の成果を挙げたと評価できる。