表題番号:2025C-540 日付:2026/03/16
研究課題LGBTQ+コミュニティと災害支援体制の多様性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 助手 全 銀河
研究成果概要

 本研究は、災害時におけるLGBTQ+コミュニティへの支援体制の現状と課題を明らかにし、社会的包摂の観点から改善の方向性を検討することを目的として実施された。近年、災害研究においては高齢者や障害者、外国人など、社会的に脆弱な立場に置かれやすい人々への支援の重要性が指摘されているが、LGBTQ+に関する議論は依然として十分とはいえない。特に、同性パートナーシップ制度は全国的に広がりを見せているものの、法制度上の家族として認められていないため、同性パートナーは災害時に様々な困難に直面し得る。

 まず、日本国内におけるLGBTQ+コミュニティへの災害支援事例を整理した結果、いくつかの共通した課題が確認された。第一に、災害支援制度が「家族」あるいは「世帯」を基本単位として設計されているため、同性パートナーの場合、公的支援へのアクセスが制限される可能性がある点である。第二に、避難所という共同生活空間において、パートナーとの関係性について説明を求められる状況に置かれる場合もあり、そのこと自体が心理的負担となり得る。

 次に、過去の被災当事者へのインタビュー記事や調査資料の分析からは、災害時において同性パートナーが家族として支援を受けられないことが、精神的な不安や孤立感を強める要因となっていることが示唆された。一方で、LGBTQ+支援団体や市民団体が独自に情報提供や相談支援を行うことで、当事者の不安を軽減する取り組みも確認された。

 以上の分析から、災害時におけるLGBTQ+コミュニティへの支援においては、制度的枠組みと社会的理解の双方における改善が必要であることが明らかとなった。具体的には、避難所運営マニュアルや防災計画において多様な家族形態を想定した対応を明確化すること、また性的多様性やパートナーシップ制度に関する研修や啓発活動を通じて支援者側の理解を深めることが重要である。さらに、LGBTQ+コミュニティと行政、支援団体との連携を強化し、当事者の声を防災政策に反映させる仕組みを整備することも求められる。