| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 助手 | 中塚 哉太 |
- 研究成果概要
大腸菌Sequence Type 131(ST131)は,尿路感染症や菌血症の主要な起炎菌として世界的に蔓延する多剤耐性クローンである。薬剤耐性菌に対する代替治療として注目されるファージ療法においては,ファージの宿主域の狭さと細菌のファージ耐性化が大きな課題となっている。本研究では,大腸菌ST131株間で高度に保存された外膜タンパク質(Outer membrane protein: OMP)を標的とし,それらを組み合わせることで,広域なST131臨床分離株に有効なファージ製剤の開発を目指した。
まず,ST131臨床分離株205株を対象に,主要なファージ受容体であるOMPのアミノ酸配列解析を行い,12種類のOMPについて高い配列保存性を確認した。次に,保存性が特に高い各OMPをそれぞれ標的として認識するファージを都市下水からスクリーニングし,ST131臨床分離株に対して広域な溶菌活性を示すファージを取得してライブラリーを構築した。そして,構築したファージライブラリーの有効性を検証するため,経時的な細菌増殖抑制を評価した。異なるOMPを標的とするファージを2つ組み合わせたカクテル試験を行い,ST131株に対する増殖抑制効果を評価した結果,相乗的な殺菌効果を示す組み合わせが認められた。また,使用するファージの種類および組み合わせによって抑制効果が異なる傾向も明らかとなり,有効なカクテル設計には組み合わせの最適化が重要であることが示唆された。
以上の結果から,配列保存性の高いOMPを標的とする戦略が,広い宿主域の確保と耐性化抑制を両立するファージ製剤の設計に有効であることが示された。今後は,残るOMPに対するファージの取得を進め,より広域かつ耐性化を抑制したファージ製剤の最適化を図るほか,世界的に蔓延する他のST型に対してもファージライブラリーを構築する予定である。