表題番号:2025C-512 日付:2026/03/31
研究課題MASLD肝臓におけるERBB3受容体の機能解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助手 吉開 未菜実
(連携研究者) 理工学術院 教授 合田 亘人
研究成果概要
ニューレグリン1(NRG1)は標的細胞上のERBB3あるいはERBB4受容体を介して、さまざまな病態形成に関与することが報告されている。これまでに我々は、NRG1が肝臓においてERBB2/3受容体を介して糖新生を抑制することを明らかにしてきた。一方、近年NRG1がMASLDを改善する可能性が示唆されているものの、その作用標的となる細胞種および関与する受容体については十分に解明されていない。そこで本研究では、MASLDの病態形成および進展におけるNRG1-ERBB3シグナル経路の役割を明らかにすることを目的として、肝細胞特異的Erbb3欠損マウス(HepErbb3KO)を用いた解析を行った。まず、高脂肪高糖質食投与により脂肪肝を誘導したHepErbb3KOマウスでは、Erbb3遺伝子の欠損により肝臓内中性脂肪の蓄積が抑制される傾向が認められた。次に、四塩化炭素を4週間継続投与することによりHepErbb3KOマウスに肝線維化を誘導したところ、肝障害および肝線維化の程度に有意な差は認められなかった。一方で、脂肪肝および肝線維化を誘導したマウスではNrg1遺伝子の発現上昇とErbb3遺伝子の発現低下傾向が見られた。さらに、これらの発現変動の細胞特異性を検討するため、肝細胞および肝星細胞を単離して解析した結果、Nrg1およびErbb3の発現変動は主として肝細胞において生じていることが明らかとなった。以上より、肝細胞におけるNrg1の発現増加とErbb3の発現低下は肝病態の進展に関与する可能性が示唆され、特に脂肪肝病態の改善に寄与することが示された。これらの知見は、NRG1-ERBB3シグナル経路が肝疾患に対する新たな治療標的となり得ることを示すものである。