表題番号:2025C-507 日付:2026/02/02
研究課題黄色ブドウ球菌ファージの特性解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 常田 聡
研究成果概要
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は世界中の医療施設で院内感染を引き起こし、深刻な問題となっている。このような社会的背景を受け、抗菌薬の代わりにバクテリオファージ(ファージ)を用いた治療が期待されている。ファージは抗菌薬と異なり、抗菌スペクトルが特定の種に限定されており、標的とする細菌種を狙って溶菌でき、細菌叢を乱さないため、人体への副作用が少ないというメリットがある。しかしながら、黄色ブドウ球菌に感染するファージの生理学的性質について十分な知見が存在しない。そこで本研究では、多種多様な黄色ブドウ球菌ファージを環境中から分離した。その結果、32株の黄色ブドウ球菌ファージの獲得に成功した。透過型電子顕微鏡を用いてこれらのファージの形態を観察した結果、直線的な尾部を有するMyovirus(24株)、曲線的な尾部を有するSiphovirus(3株)、短い尾部を有するPodovirus(1株)、頭部および尾部が細長いFilamentous(4株)の4形態に分類された。全ゲノム解析に基づく系統分類は形態学的な分類と概ね一致しており、中には新属を形成する可能性のある新規性の高いファージも含まれていた。つぎに、固体培地上で黄色ブドウ球菌臨床分離株(69株)に対する感染性試験を行った結果、溶菌率の平均値は約80%であり、多くのファージが広域感染性を示した。一方、ファージ感受性の⾼い黄色ブドウ球菌臨床分離株を対象として、液体培地中で各ファージの溶菌活性を評価した結果、獲得された32株のファージのうち19株は溶菌開始後24時間以上も溶菌が持続したことから、溶菌活性の高さが示唆された。本研究で構築したファージライブラリーおよび各ファージの生理学的知見は、ファージセラピーの実用化に向けた重要な基盤となることが期待される。