| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 柴田 高範 |
- 研究成果概要
本研究では、イリジウム触媒を用いたアセトアニリドと内部アルケンの反応による、遠隔位での分岐選択的かつエナンチオ選択的C–Hアルキル化反応の開発を行った。C–H結合の直接官能基化は、原子効率および工程効率に優れた有機合成手法として近年大きな注目を集めている。特にアルケンをアルキル化剤として用いる反応は副生成物を伴わない理想的なC–C結合形成反応であるが、内部アルケンを用いる場合には位置選択性および立体選択性の制御が困難であり、遠隔位置での不斉C–C結合形成を実現することは依然として大きな課題であった。
報告者は、金属がアルキル鎖上を移動する「チェーンウォーキング」機構とC–H活性化を組み合わせることで、この課題の解決を目指した。アセトアニリドを基質とするイリジウム触媒反応において、酒石酸由来の骨格に基づく新規キラルジホスファイト配位子を設計・合成し、その有効性を検討した結果、電子求引性置換基を導入した配位子を用いることで良好な収率とエナンチオ選択性を両立できることを見出した。さらに、触媒前駆体である[Ir(cod)₂]NTf₂をキラル配位子よりも過剰量用いる条件が、チェーンウォーキングの進行および反応効率の向上に重要であることを明らかにした。
最適条件下で基質適用範囲を検討したところ、さまざまな置換基を有するアセトアニリド誘導体および内部アルケンに対して反応が進行し、完全な分岐選択性と良好なエナンチオ選択性(最大91:9 er)で生成物が得られた。また、生成物の単結晶X線構造解析により絶対配置を決定するとともに、アミド基の加水分解により光学活性アニリンへと変換できることを示した。
以上の結果から、イリジウム触媒によるチェーンウォーキングとC–H活性化を組み合わせることで、内部アルケンを用いた遠隔位での分岐選択的不斉C–C結合形成を実現した。