表題番号:2025C-492 日付:2026/04/02
研究課題補因子の荷電状態変化がもたらす電子伝達タンパク質の誘電アロステリーと機能制御機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助手 飯島 美来
研究成果概要
シトクロムP450還元酵素(CPR)はNADPHから電子を受け取り、2つのフラビン補因子であるFADとFMNを介して様々なヘムタンパク質へ電子を供給する。CPRはFADが結合するFADドメインとFMNが結合するFMNドメインの2つのドメインからなり、フラビン補酵素の酸化還元と共役したFAD-FMNドメイン間の開閉によって電子伝達を制御していると考えられている。この共役機構解明のため、分子動力学(MD)計算も含めてこれまで多くの研究がなされてきたが、解明には至っていない。本研究では既報(Iijima, Ohnuki, Sato, Takano, Sci. Rep., 2019)で用いたものより高解像度の結晶構造を初期構造に用いて酸化と還元それぞれの状態でのCPRの長時間のMD計算を行い、酸化還元状態とドメイン開閉状態の間の共役を解析した。すると従来考えられているドメイン開閉では酸化還元状態との弱い共役が見られた。これはIijima et al., 2019で見られた共役関係が長時間計算でも見られたものとなる。さらにドメイン同士のねじれを解析するとよりはっきりとした酸化還元状態とのカップリングが見られた。このねじれはヘムタンパク質への電子伝達に適した構造へ遷移するための動きの一つであると考えられる。このようなカップリングの物理的背景を探るため、CPR表面の電荷分布を調べた。すると元々ドメインの界面で見られた電荷的相補性を打ち消すような還元によって生じる様子が見られた。これは還元に伴う補酵素の電気量変化がトリガーとなってCPR分子内の水素結合ネットワークの組み替えが連鎖し、ドメイン界面および下流タンパク質結合界面に分極電荷が生じ(誘電アロステリー(Sato, Ohnuki, Takano, J. Chem. Phys. B, 2016))、これによりドメイン開閉とヘムタンパク質の結合が制御される可能性が考えられる。