表題番号:2025C-464 日付:2026/03/31
研究課題オートポイエーシスの機構に着目した人間―技術関係のデザイン方法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 上杉 繁
研究成果概要
デザインの対象は人工物からサービス,社会へと広がり,それに応じてデザインのプロセスも,問題解決から問題設定,さらにはニーズを扱う領域へと発展している.デザイン活動が拡大する中,伝統的な科学や工学のアプローチでは解決困難で定式化できない問題を,リッテルらはWicked Problemsと呼んだ.昨今,複雑な問題にデザインで対処する新たなアプローチとして,サイバネティクスの考えをデザイン実践へ適用する試みが行われている.こうした状況を踏まえ,申請者がこれまで着目してきたオートポイエーシスの機構における,人間―技術関係のデザイン方法への展開に取り組む.そこで,複数の哲学者やデザイナーが言及してきた,「棒」と「器」という道具の原型に基づいて,デザイン対象,プロセスを分析し,オートポイエーシス機構の位置づけを見出した.
「棒」は対象物の形状,位置,状態に直接作⽤し,人工物のみならず,データや概念も作⽤の対象とする.「器」は環境条件の操作によって,対象物を含む道具内部の状態に作⽤する.貯蔵,反応,運搬の作用があり,「棒」と同様に,人工物からデータ,概念までもその対象とする.人工物の機能をデザインの対象とする領域は「棒」の作用,人工物とのインタラクションやユーザ体験,サービスなどの領域は,人間,人工物の間で状況に応じた関係性が生じるという点で,「器」における反応作用として捉えられる.そして,組織や社会がデザインの対象になり,多様なステークホルダーが関わるようになると,事前に設定した「器」では期待する反応は起こらず,新たな反応によって「器」そのものを再構築する必要性も生じる.このプロセスにオートポイエーシスの機構が位置づけられる.そして,システムの活動状態を感じ取り,その活動を自ら調整する,河本英夫が提案している第四段階のオートポイエーシス機構もこのデザインプロセスには必要となる.