表題番号:2025C-451 日付:2026/03/31
研究課題第二次世界大戦後世界におけるアトリエ ル・コルビュジエを中心とした建築家の活動研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助手 湊 明人
研究成果概要

これまでの研究では、第二次世界大戦後世界における建築家の職能変化と知の生成過程を明らかにすることを目的として、アトリエ・ル・コルビュジエを中心に活動した建築家たち、とりわけ1950~52年にフランスへ留学した吉阪隆正の在仏期に注目してきた。まず、早稲田大学所蔵の在仏日記4冊と挿入資料の悉皆的な解読・活字化を行い、記述内容を思索、学習、旅、交友、ル・コルビュジエ、アトリエ従事者、計画進行などの項目に分類・整理した。その結果、従来のようにル・コルビュジエ個人からの影響を中心に在仏期を理解するだけでは不十分であり、多国籍な従事者同士の協働や議論、在仏日本人や各国知識人との交流、民家調査や各地への旅などを含む留学全体が、吉阪の思想形成に深く関与していたことを明らかにした。特に、アトリエ・ル・コルビュジエにおける弟子たちの協働については、吉阪日記と従事者名簿との照合により、ドーシ、クセナキス、サンペールら多国籍な従事者が日常的に議論し、互いの出身地の住居や都市、構法、社会状況を持ち込みながら設計を進めていた実態を検討した。こうした協働は単なる作業分担ではなく、個々の計画案や判断に相互の知識と経験が入り込み、アトリエの設計そのものに影響を与える創発的な関係であったと考えられる。また、スケッチブック約1400点、ネガフィルム約200点の整理と分析を進め、日記と横断的に読むことで、建築、都市、民家、人物、風景に向けられた吉阪の視線と記録行為の特質も把握してきた。今後は、これら四種の資料を同日単位で統合的に読み解き、アトリエ、旅、民家調査、書簡交流が相互に連関する総合的学習体験としての留学像を再構成するとともに、そこから戦後世界において建築家の知がいかに協働的かつ越境的に生成されたのかを、より普遍的な視点から論じていく予定である。