表題番号:2025C-424 日付:2026/03/06
研究課題ドリフト付きエルゴード的ガウス過程に対するM-推定とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 清水 泰隆
研究成果概要
本研究では,高頻度で観測される時系列データに対して,時間とともに変化する平均構造(ドリフト)をもつガウス過程モデルの新しい推定方法を提案した.このようなモデルは,死亡率の長期変動や環境データのトレンド解析など,長期的な変化と短期的なランダム変動が同時に存在する現象の分析に広く用いられる.しかし従来の推定法(最尤法など)は,大規模な共分散行列の計算や逆行列計算を必要とするため,高頻度データでは計算量が非常に大きくなるという問題があった.

本研究では,隣接する観測値の差分に基づく局所的なコントラスト関数を構成することで,共分散行列の逆行列計算を必要としない計算効率の高い推定法を提案した.さらに,一般的なエルゴード性条件の下で,提案した推定量が一致性および漸近正規性を満たすことを理論的に証明した.特に,ドリフト成分の推定において通常とは異なる収束速度が現れることを示し,その原因が関数の直接リーマン可積分性にあることを明らかにした.

また,共分散構造の一部のパラメータが識別できない場合には,モーメント法を併用することで識別性を回復できることを示した.本手法は計算負荷が小さく,大規模データや高頻度データに対して適用可能であり,機械学習や環境統計などの分野におけるガウス過程モデルの実用的な推定法としての応用が期待される.