| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 基幹理工学部 | 講師 | 椎木 政人 |
- 研究成果概要
液体金属の相互拡散係数は金属の凝固・結晶成長において重要な物性値である.ここで相互拡散係数の濃度依存性は,その理論式であるDarkenの式で表されると考えられるが,液体金属においてその関係が成り立つかは明らかではない.一方で相互拡散係数の濃度依存性の解析は,Boltzmann-Matano法を改良して,合金のモル体積を考慮した解析を可能としたSauer-Freise(SF)が有効と考えられる.しかし相互拡散係数測定において,試料濃度測定時の不確かさにより合金の濃度分布がばらつくため,SF法の適用が困難であった.そこで本研究は,不確かさの小さな相互拡散係数を取得するために,得られた濃度分布の中からSF法の解析に適した濃度分布を判定する方法を明らかにすることを目的とした.シアーセル法と安定密度配置を用いて,液体Sn-Pb合金の相互拡散実験を行った.拡散試料として上部にSn5-Pb95合金,中間セルをSn10-Pb90合金,下部にSn15-Pb85合金からなるf1.5×60 mmの拡散対を用いた.拡散温度および拡散時間はそれぞれ773 K,9000 sとし,4組の試料を同時に拡散させた.また試料配置は重力方向に密度が単調増加する安定密度配置とした.はじめに加熱炉を真空雰囲気にしたのち,拡散温度まで保持し試料の均質化を行った.その後,中間セルを挿入して拡散を開始した.拡散時間経過後,試料を20個に分断し,冷却した.そして取得した拡散試料を混酸によって溶解し,ICP-OESを用いてSnおよびPbの濃度分布を取得した.ここで相互拡散による濃度分布の理論式はFickの第2法則から導出される誤差関数で表されるが,濃度分布の勾配はガウス分布となる.よって中心濃度付近の濃度勾配がただひとつのピークをもつ結果のみを採用するという基準によりSn-Pb合金の濃度分布を判定し,SF法を用いた解析を行った.その結果,中心濃度における相互拡散係数の不確かさが低減し,判定した相互拡散係数が先行研究に対して低減した不確かさの範囲内で一致した.以上より,中心濃度付近の濃度勾配により濃度分布を判定することで,相互拡散係数の濃度依存性を評価できることを明らかにした.